某日 最終日

 すべてを諦めて帰宅途中・・・近くの神社を通った。

 ふと境内のわきに黒いのがうじゃうじゃいる。あれ?これって・・・まさか・・・

 アリだーー!

たしかに素早く捕まえづらかったがこんだけいればさすがに何匹かは引っかかる。
アリ 「うわ〜なんか捕まってもうた〜」
観察のしやすい大きいアリ

5匹ゲット!


ついにアントクアリウムに村人が住みついた(半強制で)。ついに、夢のアリの生活が観察できるんだ。さあ、レスリングだろうと、きのこ栽培だろうと何でもやってくれ!


 砂と紛れてアリが見えずらいかと思います。アリさんは赤丸チェックだ。

 どれどれ・・・今日のアリさんは・・・
コソコソ。
「どないする?」
「俺は巣を作る」
「やっぱ真ん中にこういう感じで」
コソコソ。

会議してる!

アリさん会議してるよーー!いやっほーー!


アリを捕まえるために砂ごとつかむという荒業に出たのだが、どうも観察しにくい。もともとアリは砂に化けている生き物だからね。でも、今ふたを開けて砂を取ろうとしたらせっかく取ったアリが逃げてしまう。
まあ、アリが巣を作ったら砂を取ろう・・・

そう気軽に考えていたが、その考えが間違っていた!

 数日後。
おおっと巣を作ってる
!作っているぞ!画像ではわかりずらいがたてにトンネルが出来ています。
このう〜 おりこうさんたち!!

緊急事態発生!
5匹のうち1匹のアリさんがトンネルにすっぽりはまって地上に戻れない
。トンネル部分が前の写真よりじゃっかん黒目なのはアリの黒さなのだ。
「はまったさかい〜助けて〜な〜」
「おい。どないする??」

会議する残りのアリさん達。

 なんと!
アリさんたちは綱引きのように繋がってはまったアリさんを引っ張ってるではないか!
「おーえすー おーえすー!」
すぽん。
「いえ〜い!」
「巣を作るプロが巣にはまるとは〜さるすべり やな」
「自分 しょうもな。」

オーイエース!サイコウだよお前らーー!!無事 救出。もうはまるんじゃないぞ。


そんなこんなで楽しい日々を過ごしてました。しかし、別れは突然やってくるのであった。それはある暑い日でした。

 ただいま〜
さっそく本日のアリチェック。
あいつら何してるかな〜?
おっ今日は逆さまになってらあ。
逆さま!?・・・アリ・・・アリが逆さまになって
る・・・まさか・・・
アリが死んでいる!!?

 ・・・あまりにも突然でした。
昨日まで、一緒に暮らしてたアリが、もう・・・動かないです。あの、バカで一生懸命なあいつらはもういないのです・・・

「おまえら・・・堪忍してーな・・・」




感想 『別れ』

説明書をよく読んでも、死因は不明です。もしかすると、砂ごと入れたのが間違いだったのかもしれません。アントクアリウム内は無菌状態なので、砂に菌が入ってたらそこで菌が成長してしまい、アリによくない影響を与えてしまったのでは・・・。真相はわかりません。でも、僕はこいつらのいい飼い主にはなれませんでした。こいつらを幸せにするって決めて神社から連れてきたのに。本当に無念です・・・あれ?いまガラスに・・・まさか??

 生きてる!
一匹だけ生存者がいる!

「まだ生きてるさかい・・・勝手に殺さんといてーな・・・あかん・・・ふらふらや」

でも、かなりの重症。何とかしてやりたい。こいつは今、必死に壁にへばりついている。たぶん外に出たいんだろう。・・・僕は夜中にアントクアリウムを持ってチャリを走らせた。
「待ってろ!」

チャリの先は神社。こいつらの故郷。
僕は、あいつらの巣を見つけた。仲間と死別し、生き残ったこいつとも別れるのはなおさら悲しい。しかし、僕には飼う資格がない。こいつは故郷で生きるのが幸せなんだ。  たった一匹になったアリと仲間の遺体をそっと置いた。アリは匂いで仲間の区別をするそうです。別の巣穴じゃアリは受け入れられない。でも、故郷ならきっと 生き残ったアリは受け入れられるでしょう。もしも、あと数時間の命であったとしても生き残ったアリにとって、仲間に囲まれ、見取ってもらい、墓を作ってもらう。アリのルールに戻すことが彼の幸せなんだろうと思います。

アリ「だから殺さんといてーな・・・」


 

感想 『真の別れ』

アントクアリウムは確かに素晴らしいアイテムです。でも僕には資格がなかった。
この神社を通るたび、まず仏閣ではなく巣穴に祈りをこめる。もう、あいつも死んだのかもしれない。いやいや、きのこでも栽培して意外とよろしくやってるのかもしれない。まさか、穴にはまってないだろうな・・・想像は膨らみます。

こんな話を思い出した。

刑務所の囚人が小鳥を飼い、小鳥も囚人に馴れ、囚人にとってかけがえのない存在にまでなってた。しかし、囚人はある日突然 小鳥を大空に放す。仲間の囚人が質問する。
「なんだって可愛がっていた小鳥を放すんだ?」
「小鳥が死ぬまで世話するよりも、大空に放せば小鳥の最後を見ることはない。何年経ってもあの小鳥は今もどこかでよろしくやってんじゃないかと想像が膨らむ。俺の中で小鳥は永遠に死なないんだ」

その囚人は死刑囚だったのです。



あのアリの人生は彼のものであって僕が真相を知る必要はないかもしれません。たしかに、あいつらとの生活は楽しかった。もう充分です。

僕には区別のつかない 巣穴のアリ達を踏まないように、まるでツイスターみたいな足取りで神社から帰りました。

完   

          

 

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